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自由が欲しい時は、
他人に頼んじゃいけないんだよ。
君が自由だと思えばもう君は自由なんだ。
00:さかな、であう
やばい、どうしよう、きもちわるい。
どうして、おんなのこって、月に一回、痛くて苦しい思いをしなきゃいけないんだろう。仕方がないことかもしれないけど、だからって納得できるわけでもない。特に今日のはひどくて、朝からめまいやらたちくらみやらが数えきれないくらい。それでも、這うようにして学校に来たんだから、わたしはわたしをほめてあげたいと、思う! なんて、言ったところでどうしようもない。溜息をつきながら、腕の中の教科書を抱え直した。筆箱、教室に忘れるって、どれだけぼうっとしてたんだろう。みんなには笑われるし。もー、本当に今日のわたしはだめだめだな。次の授業まであんまり時間がないから、ちょっと早足でろうかを曲がった、次の瞬間。なにか弾力のあるものに勢い良くぶつかって、反動でわたしは尻もちをついてしまった。じいん、と腰が痛む。「す、すみませんっ!」反射であやまってから、わたしは散らばった教科書を拾い集めた。もう、わたしの、おばか!! 恥ずかしすぎて、ぶつかった相手の顔を見ることすらできなかった。「わり、」というかるい謝罪が上から降ってくる。ぽん、と軽くあたまを叩かれて、なにかと思って見上げたら、相手の背の高さにびっくりした。
「ほらよ」
差し出されたのは筆箱だった。きれいな筋肉の付いた褐色の腕が、それをふらふらと振っている。「あ、ありがとうございます!」慌てて立ち上がって、それを受け取る。親切なおとこのこでよかった。それにしても、背、高いなあ。そう思って、見上げたのがいけなかった。「あ、」という力の抜けた声が、わたしの唇からするりと漏れる。目の前がまっしろになって、ちかちかする。「おい?!」っていう、男の子の声が聞こえた気がした。揺らぐ視界、海の底のような瞳を最後に、わたしの意識はブラックアウトした。